私たちは広告を制作する技術を持つプロではありますが、クライアントのご担当者をはじめとして大きく関わるみなさまには、広告に携わるプロとしての視点、見識を持って頂き、意見交換をしながら制作を進めていけたら理想です。
ここでこのコンテンツの最初に戻るのですが、キーポイントは「社内の視野でなく、顧客の視点を持つ」ことの重要性です。ユーザー目線、つまり時代の流れを常にキャッチしておきたい、という事です。
例えば、近年で最も大きな時代のイノベーションは、スマホによるものでしょう。LINEやTwitterなどのSNSの出現で無料のリアルタイムでのコミュニケーションも生まれ、個人が情報を発信できる時代になりました。今やTVの視聴時間よりネットでの動画視聴時間のほうが長くなっている、という人も多くなってきています。
スマホはさらにそれを加速させました。知り合いとの無料通話も常識になり、ファッションショーを見ながら、欲しくなった洋服をその場で購入可能になりました。彼氏彼女の居場所もリアルタイムで確認可能です。iPhone 3Gが発表されたのが2008年6月。多くの人がこの10年でライフスタイルも常識も、ビジネスの考え方も変わってきているはずです。
激動のグローバリズムの時代。ユーザーのライフスタイルやマインドをCatch-upしておく
リーマン・ショックは外資の進出やM&Aのニュース等でうっすらと感じていたグローバリズムの波を、私たちに痛烈に現実のものとして実感させた事件だと思います。
アメリカ合衆国のイチ投資銀行の破綻が世界的な金融危機を起こし、日本経済にも長期にわたり強いインパクトをもたらしました。バブル以降冷え込んでいた広告業界は加速度を増し、広告会社のリストラや倒産も雪だるま式に増加します。日本のデフレも一気に加速させ、「失われた10年」を「失われた20年」に引き延ばしていきました。誰もが頭を金槌で殴られたように「これからはもう他国の問題も他人事ではいられないんだ」と痛感したと思います。
私たちの手元にリアルタイムで世界の情報が入ることと引換に、世界各国での事件が日本経済に、私たちの生活に影響を及ぼす激変の時代に入りました。10年一昔と以前は言いましたが、もう少なくとも2~3年スパンぐらいでは私たちの生活環境やマインドを更新しなくてはいけないと思います。
そして、特に私たち日本人はこういった社会や経済のリアリズムを積極的に収集する必要があると思います。
情報武装をしっかりとしておこう!
日本人にはどこか「臭いものには蓋をする」という、嫌な現実からは目をそらす国民性があるかもしれません。ニュースでも盛り上がるのは、社会問題や経済問題ではなく、いつも芸能人のゴシップなどで、良くて?政治家のお金の問題です。
私たちを取り巻く現実ー例えば世界保健機関による年齢調整自殺率(2015年)は170国中17位。もちろん高い順。とても生きづらい国だという事を示しています。GDPは世界3位ですが2位の中国の半分にも及びません。成長率は93位の成熟国。学力もOECDの中で高いようですが、1位は上海でシンガポールも日本より上です。
少子高齢化でこの先何年も経済力があげるのは難しい。もう数字上では今やアジアの覇者とは言えません。身近なことでも、例えば捨て猫をしたら100万円以下の罰金。エサや水を与えずに衰弱させるなどでも100万円以下の罰金。殺したり傷つけたら2年以下の懲役または200万円以下の罰金ということさえ知っている人は少ないのではないでしょうか?
私たちは自分たちの国の事や生活法規に関してもかなり疎いと言えないでしょうか?でも、そういうことをマスコミはなかなか伝えてくれないんですよ。情報武装を自らしておかないと、知らない間にとんでもない窮地に陥ったりするかもしれない、ある種怖い社会といえるかもしれません。
スマホのユーザビリティから変わるべき、レガシィメディアの新しい広告のカタチ
先程のスマホの話に戻りますと、多くの人にスマホが普及してきたのは実際この数年ぐらいかと思います。スマホのイノベーションは私たちの情報への接しかたに大きな変化を生み出し、意識の変化を生み出しました。
それで言えば、この数年にそのような近年のユーザーの意識の変化に対応して制作されていない広告ツールはもう「ヤバい」と思った方が良いと思います。ユーザーマインドから乖離している可能性は大きいのではないでしょうか。もしかすると、ある時点から急落する株価のように、その広告ツールの効果は激落ちし、それが御社の売上とひいては評判の低下につながる可能性を、真剣に検討すべき段階だと思います。
PCすら触ったことがないけれどスマホで育ったという世代が、そろそろ大人と言われる年代に入って消費文化を担ってくる今、紙を中心にしたレガシィメディアの広告戦略と広告表現も変革が求められていると思います。手元で、かつてないほどの深いグローバルな情報を指先一つで簡便に手に入れられる事が日常です。
なにせwebでは、ユーザー個々のプロフィールや特性を把握して、リアルタイムに適した広告を選択・表示する時代です。その感覚・ユーザビリティを紙媒体にも求められる時代に入るでしょう。そんなユーザーマインドをCatch-upできないクリエイター、広告会社、広告主はフルイにかけられることになるでしょう。それはもう潜在化しており、特に10~20代の若い層をターゲットにするのであれば、自社のコミュニケーションの検証に、今すぐにでも危機感を持って取組むべきだと思います。
広告は「世相を映し出す鏡」といわれますように、社会・経済に連動していくものです。生き残るためには激動の社会やユーザーマインドをしっかりとWatchして、追従していくしかないと思います。そのための柔軟な思考と機動力、情報収集力と分析力を持つ事が大切だと思います。