白人vsマイノリティー、知識層vs庶民、だったと言われるヒラリーvsトランプ。
当初、政治経験もなく、突飛な発言がクローズアップされて、良くても大穴としか見られてなかったトランプ。
また日本では、そのスキャンダル合戦ばかりがクローズアップされて、アメリカ本国での実情に目が向かなかったこともあり、落胆まじりの驚きを持って迎えられたトランプ候補の当選。
アメリカの大統領選は1年ほどの期間もあるため、メディア合戦の様相もあります。
政治論でなく、コミュニケーションの視点から、様々なニュースを交えて考察してみます。
トランプ氏のコミュニケーション戦略
まず、コミュニケーションに大切なのは、コンセプトです。
トランプは、「怒りのメッセンジャー」(選対本部長)としてのスタンスにブレがなかった。米国の繁栄と価値観を支えてきたと自負する白人庶民層ですが、オバマ政権下で、政治からないがしろにされていた状況があります。
しかし、もはや怒りは限界値だったのかと。
トランプは、最大の投票ブロックである彼らの怒りの究極の代弁者であり、それに尽きる。
だから、政策は所詮政治論。セクハラも結局はイエローゴシップにすぎません。
実際トランプは、民衆の声を報じないメディア批判を繰り返していますし、長年腹に抱えて来たものがある彼らには、どうでもよかった。背に腹はかえられない。
むしろ政治不信に陥っていた。
そこを汲み取って、政治家ではないことを逆手にとって、ヒラリーの得意の米国選挙で当たり前のマーケティングや世論調査もほとんど使わない。
政治的体裁論ではなく、何に一番苛立っているかをカギにした大きなマーケティングだったともいえます。
SNSを活用したメッセージ戦略
メッセージの拡散力も飛び抜けていました。
選挙戦が始まるまでの1年間に、トランプが得たマスコミ報道は広告価値に換算すると20億ドル分にもなるとの試算もあります。
選挙中のTwitterフォロワー数は1500万人とダントツだそう。
Departing New York with General James ‘Mad Dog’ Mattis for tonight’s rally in Fayetteville, North Carolina! See you soon! #ThankYouTour2016 pic.twitter.com/gvRkQkwblE
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2016年12月6日
ヒラリーのほうも、実際、投票者総数ではトランプを上回ったようですが、ヒラリーの都会中心の選挙では全米の田舎や工場地帯にうねる怒りの波には勝てなかったということでしょう。
ヒラリーとトランプの選挙運動は、よく「政治マシン対ムーブメント」に例えられますが、民主党予備選挙でヒラリーを追い詰めたサンダースの例でもわかるように、ムーブメントの季節がやってきていると言えるのではないでしょうか。
期待される実行戦略
トランプは政治家ではないけどビジネスマンではあります。
コンペに勝利したあとの、実行戦略をどう組み立てるか?…広告の仕事でも、コンペに出したものをそのまま世に出すことはまずありません。
実際の政治手腕に注目が集まります。